Story
METATRON(メタトロン)開発ストーリー
2人の若手エンジニアが取り組んだ、
新たな製品づくりへの挑戦。

2024年、エムジーから新たな信号変換器シリーズ「METATRON(メタトロン)」が誕生しました。社会や現場の課題に向き合い、前例のない技術にも挑戦しながら、5年の歳月をかけて完成させたこの製品。その中心には、技術の可能性を信じて粘り強く取り組んだ、2人の若手エンジニアの姿がありました。本プロジェクトを支えたKさんとSさんに、開発の舞台裏を伺いました。
プロジェクトメンバー
開発部 ハードウェア1L
Kさん
2018年3月に大阪公立大学工業高等専門学校を卒業後、同年4月に株式会社エムジーに入社。設計部に配属され、4年間特殊仕様の製品の設計を担当。2022年、開発部へ異動。現在は新製品のハードウェアの開発業務を担当している。
開発部 ソフトウェアL
Sさん
2021年3月に新居浜工業高等専門学校を卒業後、同年4月に株式会社エムジーに入社。設計部に配属。2022年、開発部へ異動。現在は新製品のソフトウェアの開発業務を担当している。
プロジェクトの背景とねらい
近年、建物や工場などの制御システムにおいては、さまざまな通信規格や機器が混在し、現場では複雑な配線や設定が大きな負担となっています。こうした課題に対し、エムジーは「誰でも扱える」信号変換器を作る、という構想を掲げました。
目指したのは、省配線・省エネ・省コスト・省設備を実現するための新たな製品。「METATRON(メタトロン)」開発プロジェクトは、現場で求められる操作性と信頼性の両立を目指し、若手エンジニアたちも存分に力を発揮しながら開発が進められました。2024年には、長距離通信や直感的な操作を実現したシリーズ製品が完成。今後のさらなる進化も期待されています。
より使いやすい信号変換器を目指して
エムジーが、その圧倒的な製品ラインナップで国内シェアNo.1を誇る「信号変換器」。信号変換器とは、さまざまな種類の信号を、別の信号に変換する機器のことです。主に計測・制御システムで使用され、例えばセンサからの微弱な信号を制御装置が扱えるように変換したり、異なる通信規格の信号を相互に変換したりする役割を担います。
今回のプロジェクトは、空調管理などに使用されるビルオートメーション用の信号変換器をより手軽に扱える製品として実現するため、2019年から検討が始まりました。しかし、そこには多くの課題がありました。まず、当時安価なLANケーブルは最大100mしか伝送できず、信号を安定してシームレスに(継ぎ目なく)長距離伝送するのは難しい状況でした。一方で、光ケーブルを使用する場合は、膨大な時間とコストが必要になります。また、当時通信の高速化・大容量化が急速に進み、さまざまなネットワークが進化するとともに、それらの制御においては新旧のシステムが混在する環境になっていました。
そこで、これらの課題を解決し、年々大型化するビルにも対応できるまったく新しい信号変換器を目指して、プロジェクトが始動。ハードウェアとソフトウェアの担当メンバーがタッグを組み、開発が進められました。
若手メンバーの参画で加速した開発
2019年に本格始動したプロジェクトの初期メンバーに、2022年、ともに設計部から開発部へ異動した若手エンジニアのKさんとSさんが加わりました。
「設計部に所属していた時から、上司に“開発業務に挑戦したい”と伝えていた」というKさんは、このプロジェクトでハードウェア設計を担当。設計段階では、新たな通信方式に対応するための仕様検討を一から進め、具体的な構成や使用部品、実装レイアウトの選定に取り組みました。
あわせて、設計ドキュメントや検証記録などの社内向け資料も整備し、プロジェクト全体での情報共有を図りました。「疑問点や問題は一人で抱え込まず、早めに共有するよう意識していました」と語ります。
一方、Sさんは、コントローラとデバイスの設定用アプリケーションや、Web画面の開発を担当。「誰でも迷わず使える」ことを目指し、機能や配置だけでなく、ユーザーが“気付きやすい画面づくり”を意識しました。ソフトウェアの動作確認において特に苦労したのは、最大64台まで接続できるI/Oユニットの監視です。Sさんは「目視確認では限界があり、“気付かないうちに通信が切れていた”という事態を防ぐために、自動でエラーを検知・記録するテストプログラムを作成しました」と語ります。このテストツールにより、エラー発生の時刻と内容をログファイルに出力し、迅速な原因特定と対処を効率化しました。
技術的な壁を超えるための試行錯誤
Kさんは、設計した回路が現場環境で安定動作するかを検証するため、通信性能やノイズ耐性を確認する実機テストに数多く取り組みました。前例が乏しい中で仕様の検討を進めることとなり、「どのケーブルを使ってテストするか」「実験結果が正しいのかどうか」といった判断すら難しい状況でしたが、ケーブルの種類や配線長、周囲の電磁環境などが与える影響を一つずつ確認し、仮説と実験を繰り返すことで信頼性の高い構成を導き出していきました。「少しずつでも確証を積み上げていくしかないと思っていました」と語ります。
ソフトウェア面では、Sさんが作成したアプリケーションの視認性や操作性の向上にも力が注がれました。「操作画面は誰が見ても状況を把握できるよう、視覚的な配色や画面構成、ステータス表示などに工夫を凝らしました」とSさん。設定画面の遷移や操作フローも、より直感的に改善しました。さらに取扱説明書の作成にも携わり、技術者以外のユーザーにもわかりやすい構成を目指して、わかりやすい表現や図解を取り入れるなど工夫し作成しました。
完成、そして次なる挑戦へ
こうした努力の積み重ねにより、2024年3月、エムジーの新しい信号変換器「METATRONシリーズ」が正式にリリースされました。1kmの長距離通信を標準仕様で実現し、PC接続だけで設定可能な手軽さや、通信の正確さなど信頼性の高さが評価されています。現在では、用途や設置環境に応じた約20種の製品ラインナップを展開し、さまざまな業界での導入が進んでいます。
「自分が設計した製品が現場で稼働していると聞いたとき、達成感や嬉しさとともに責任の重さを感じ、身が引き締まる思いがしました」とKさん。今後は、顧客ニーズに基づいた仕様提案を自ら行えるエンジニアを目指して、ますます知識を蓄え、技術を磨いていきたいと話します。
Sさんも「アプリケーションの操作性をさらに高める改良を行っていきたいです。より直感的に扱えるような工夫を重ねることで専門知識がない方も安心して利用いただける製品を目指しています。そして将来は組み込みのファームウェアの分野にも挑戦したいです」と抱負を語りました。
若手の挑戦が未来を拓く
「METATRONシリーズ」の開発は、若手エンジニアが中心となって成果を出した代表的な事例です。エムジーには、新人であっても挑戦したいという熱意があれば、中心メンバーとして活躍できる環境があります。挑戦の機会が成長につながり、その成長が企業全体の技術力向上にも直結する。METATRONの誕生は、その象徴的な成果と言えるでしょう。
